令和5年度 新政策と予算編成の方針

令和5年度 新政策と予算編成の方針

10月4日記者発表
令和5年度 新政策と予算編成の方針

I . 令和5年度新政策

~世界の変化に対応し、「魅力あふれる和歌山」を実現~

 あらゆる分野におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の加速や世界規模で進む脱炭素社会の実現に向けた動きなど、社会経済環境が大きく変化している。また、コロナ禍や国際情勢の変化等による経済安全保障に対する意識の高まりを背景に、製造業の国内回帰の動きが生まれるとともに、テレワークなど場所に捉われない働き方が普及する中、くらし方や働き方に対する意識が変化しつつあり、人々の地方への関心がこれまでになく高まっている。

 こうした変化の波をチャンスと捉え、時流を読みながら的確に対応し、地域の活力を生み出すことで和歌山の魅力をさらに高め、未来を拓いていかなければならない。

 また、長期化するコロナ禍や物価高騰から県民のくらしと経済を守りぬくため、引き続き徹底した感染症対策を講じるとともに、困難に直面する人や事業者を支えていく。

 令和5年度新政策は、『魅力ある和歌山の創造』『くらしと経済を支える基盤づくり』の2つの政策を柱として、和歌山の強みを活かした施策を積極果敢に展開することで、人や企業から選ばれる魅力あふれる和歌山を実現する。

1.魅力ある和歌山の創造
(1) 魅力あるまちづくり  (賑わいのある空間創出、景観まちづくり、地域交通)                  
(2) 人と企業を和歌山へ呼び込む  (移住4方面戦略、企業誘致)
(3) DX、GXの推進  (産業DX、行政DX、防災DX、脱炭素)
(4) 魅力ある産業づくり (事業者成長支援、農林水産業の振興、観光産業の発展)
(5) 今後の地域経済をけん引するプロジェクトの推進 (宇宙関連事業、蓄電池産業)
2.くらしと経済を支える基盤づくり
(1) くらしと経済を守りぬく (地域医療体制の堅持、困難を抱える人への支援、事業者支援・雇用対策)
(2) 安全・安心で心豊かなくらしづくり (結婚・出産・子育て、高齢者・障害者福祉、健康、防災・減災対策、防犯・交通安全、自然・文化、国際交流)  
(3) 次代を担う人と発展を支える基盤づくり (教育、生活環境整備、インフラ整備)

1.魅力ある和歌山の創造

 (1) 魅力あるまちづくり
 デジタル化の進展が、時間や場所に捉われない柔軟で多様な働き方の可能性を広げ、くらし方や働き方が変化したことで、地方への関心がこれまでになく高まり、地域発展のチャンスが訪れている。しかし、実際に和歌山に人が来てくれるかどうかについては、住環境、教育、医療など多くの要素が必要になっているが、その中ではまちの魅力が大事な要素である。一方、人口減少等により、空き家の増加が進むとともに公共交通の維持が困難になるなど、まちの機能や賑わいが低下しつつあり、まちの活力を取り戻し、魅力を高めるための取組を進めていく必要がある。     

 そのため、住みやすさと生活の楽しさを実感できるまちづくりを目指し、まちの顔ともいえる駅前や観光地などのエリアが魅力にあふれ人が集うよう、まちの歴史や成り立ちも考慮した「まちの構想図」を作り、賑わいのある空間創出に繋げるとともに、空き家対策の促進や未利用建築物の除却・跡地活用、景観に支障となる建築物の発生を未然に防ぐ取組により、市町村と連携して景観まちづくりを推進する。

 さらに、地域住民にとって不可欠な生活交通を維持・確保していくため、デマンド型交通等の導入など、市町村が行う地域に適した交通体系の再構築を強力に支援する。

 加えて、未来の景観資産となる花の名所づくりや、地域資源を活用し地域が主体となって取り組む活動への支援などを行い、魅力あるまちづくりに取り組む。

 (2) 人と企業を和歌山へ呼び込む

 ビジネス環境の良さと生活環境の強みを活かした「New Work ✕ Life Style」の提案など、本県の魅力を発信し和歌山へ人と企業を呼び込むため、「①個人移住」「②農林水産業の担い手としての移住」「③企業誘致に伴う移住」「④転職なき移住」をターゲットとした「4方面戦略」による積極的な施策を引き続き展開する。

 移住については、ワンストップパーソンを中心とした手厚い相談体制による支援に加え、空き家を利活用した定額の住み放題事業の活用などにより、移住希望者の住まい支援を強化する。

 企業誘致については、全国最高水準の奨励金制度に加え、プロモーションの強化や人材確保支援などにより、本県への立地を加速させる。さらに、今後成長分野として期待されるサービス産業や蓄電池産業などの誘致にも積極的に取り組む。

 加えて、働き方の変化により副業・兼業機運が高まっていることから、最新の知見やネットワークを有する民間企業の人材が本県の各種プロジェクトに携わる制度を構築する。

 (3) DX、GXの推進

  ① 「DX和歌山」の加速化

   全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会を目指す「デジタル田園都市国家構想」の実現に向け、デジタル技術を活用して地域の課題を解決し魅力向上を図るため、国・地方が一体となったDXの推進が求められていることから、「DX和歌山」の取組をさらに加速させていく。

   産業においては、引き続き「わかやまデジタル革命推進プロジェクト」として、各種講習会や専門家派遣などDX実現に向けた一貫支援を行うとともに、特に県内事業者のeコマース(電子商取引)を促進し、販売促進面を強化する。

   行政においては、住民の利便性向上と行政運営の効率化のため、県庁DX推進本部を中心として行政手続のオンライン化をさらに進めるとともに、国や市町村と連携し、マイナンバーカード取得を一層推進し、電子申請手続の拡大を図るなど、市町村を含む行政のあらゆる分野でDXを推進する。

   また、防災分野では、和歌山県で整備を積み重ねてきた諸制度が災害時に瞬時に実働に移せるようDX化を行う。例えば、発災後に職員(緊急機動支援隊)が被災現地で行う情報収集等を支援するタブレット端末の配備や県総合防災情報システムをプラットフォームとした災害情報の収集・伝達体制を構築しているが、すべての制度についてできるだけDX化による強化を図る。また、津波到達予測システムや防災ナビアプリの活用によって、迅速かつ的確な避難情報の提供を行う。さらに、ドローンを活用した被害状況確認や避難誘導、薬剤等緊急物資輸送など新たなデジタル技術を積極的に取り入れ、防災DXを推進する。

 ② GX(グリーントランスフォーメーション)の推進

   世界規模で進む脱炭素社会の実現に向けた動きを成長の機会と捉え、県内事業者の脱炭素化への取組を支援するとともに、国や地域と一体となって重工業の事業転換に取り組む。 

 また、国や事業者と連携し、「循環経済(サーキュラーエコノミー)」の実現に向けた広域ネットワークを構築し、グリーン水素やケミカルリサイクルに関連する産業など将来的な新産業の誘致・集積に繋げる。 

    さらに、県有施設への太陽光発電設備導入購入する県公用車を原則として電動車とすることなどにより、公共部門の脱炭素化を推進する。

 (4) 魅力ある産業づくり

 ① 県内事業者の成長支援

 デジタル化や脱炭素化による成長支援に加えて、起業家を育成するためのスタートアップ支援を加速させる。また、社会変化に対応した研究・商品開発からeコマース市場を含む国内外への販路開拓まで、段階に応じた一貫支援を展開することで、県内事業者の競争力を強化する。

 さらに、事業者が成長する上で必要不可欠となる人材を確保するため、外国人留学生の県内就職を促進するとともに、引き続きUIターン就職支援に取り組む。

 ② 農林水産業の振興

 意欲ある農業者による経営規模拡大や協業化の取組をソフト・ハード両面で重点的に支援するとともに、引き続きスマート農業技術の導入を促進することで、生産性の向上を図り、本県の農業産出額の維持・拡大を目指す。また、「熊野牛」の増頭や肥育技術向上を図る取組を支援することで、生産基盤の強化を図る。

 森林ゾーニングに基づく施策の選択と集中により、「紀州林業収益向上プロジェクト」として引き続き、スマート林業や紀州材の付加価値向上・販路拡大を推進するとともに、適切な森林管理を行うことで、林業の持続的発展を目指す。

 海洋環境の変化等により減少している水産資源を回復させるため、AI解析を活用した藻場等の調査を実施し効果的な漁場整備を推進するとともに、漁獲量減少が顕著な本県主要魚種タチウオの資源管理を強化する。併せて、漁業者グループによる複合経営を引き続き推進することで、持続可能な漁業の確立を図る。

   また、販売促進面を更に強化するため、農林水産業者が行うeコマースの導入等をサポートする体制を整備する。

 加えて、農林水産業の担い手確保のため、移住施策と連携して産地の受入体制を強化するとともに、都市部をターゲットに本県農林水産業の魅力を発信する。

 ③ 観光産業の発展

  環境にやさしい持続可能な観光地づくり(サスティナブルエコツーリズムの推進)に取り組むとともに、体験アクティビティの高付加価値化や和歌山ならではの体験プログラムを活用した教育旅行等の誘致などアウトドア観光の魅力を発信する。

  また、大阪・関西万博に向け、新たなデジタル技術等を活用したプロモーションを展開するとともに、MaaS、飲食店・災害避難施設等の多言語対応、キャッシュレス推進等によりインバウンド受入環境を整備するなど、観光DXを推進する。

  さらに、新たな観光客層を誘客するため、県内への高級宿泊施設の誘致を積極的に進めていく。

  加えて、外国船の積極誘致などクルーズ船の寄港促進に取り組むとともに、南紀白浜空港へのビジネスジェット、チャーター便、新規路線の誘致を進めていく。

(5) 今後の地域経済をけん引するプロジェクトの推進

  人や企業から選ばれる地域となるため、重工業を主力とする産業構造の転換を目指し、今後の和歌山経済をけん引するプロジェクトを推進していく。

  初打ち上げを迎える全国初の民間小型ロケット発射場『スペースポート紀伊』や、車載用リチウムイオン電池製造拠点を核として、宇宙・ロケット関連産業や蓄電池産業など成長分野の企業誘致・集積を推進する。

  また、産業の発展には優秀な人材が不可欠である。そのため串本古座高校への「宇宙探究コース」新設(令和6年度予定)や、関西の産学官が連携し発足する「関西蓄電池人材育成等コンソーシアム」への主体的な参画により、新たな産業を担う人材の育成を図る。

  加えて、宇宙産業の集積や宇宙教育の振興の契機とするため、世界的な宇宙科学関連学会の誘致活動を展開する。

2.くらしと経済を支える基盤づくり

(1) くらしと経済を守りぬく
 ① 地域医療体制の堅持
 引き続き保健医療行政による感染症対策に取り組むとともに、どの地域でも救急医療や産科医療など必要な医療が受けられるよう、地域枠医師の義務年限後の県内定着促進など医師の確保や偏在対策に取り組む。また、災害医療体制を強化するため災害拠点病院等の強靱化を図るなど、「命を守る医療体制」を堅持していく。
   また、ゲノム医療等のがん治療法の充実に取り組むとともに、コロナ禍で低下したがん検診受診率の向上や、がん患者の就労・社会参加への支援など、がん対策を推進する。
 ② 困難を抱える人への支援
 誰一人取り残すことのない社会を実現していくため、複合的かつ多様な課題を抱える人が、セーフティネットからこぼれ落ちることがないよう、福祉、介護、医療、教育など地域の多機関協働による包括的な支援を行う。
 特に、虐待や新たに顕在化したヤングケアラーの問題など、困難を抱える子供や家庭への支援として、児童家庭支援センターを追加設置することで、全県的な児童相談体制の充実を図るとともに、子供食堂応援ネットワークによる子供食堂の開設数の増加や活動の活性化により、子供の孤立化を防ぐ。
    さらに、物価高騰など日々のくらしに不安を抱える人に対して生活・雇用に関する相談支援や、貸付・給付などの経済的支援を行う。
 加えて、いじめ根絶、不登校の解消に向けた取組や、コロナに関する誹謗中傷対策を進めるとともに、アルコール、ギャンブル、スマホ、ゲームなど様々な依存症に対する予防教育や相談・医療・回復支援などの対策も推進する。

 ③ 事業者支援と雇用対策

 コロナ禍に加え、世界的な物価高騰や急激な円安等の影響で、困難に直面する事業者に対する資金繰り支援をはじめ、産業別に細やかに業況を把握し、必要に応じて迅速に施策を講じることで事業継続を支えていく。また、物価高騰分を県内事業者が適切に価格転嫁できるよう、国と一体となって下請取引適正化に向け対策を推進する。

 雇用対策として、高校生や大学生の県内就職を促進するとともに、離職や定年退職した人、都会で働く人の再就職を支援するため、本県独自の「第2の就活サイクル」の取組を行う。

(2) 安全・安心で心豊かなくらしづくり

 ① 「結婚から出産、子育て」まで切れ目ない支援

 結婚につながる出会いの機会を創出するとともに、安心して子供を生み育てることができるよう、不妊治療に係る先進医療費用の助成制度創設や、保育料無償化等の経済的支援、子育て情報検索システムやワンストップ相談窓口による多様な子育て情報発信・相談体制の構築、保育士の労務環境改善などによる保育人材定着支援などを実施する。

 ② 高齢者・障害者福祉の充実と健康づくり

 質の高い介護や障害福祉サービス提供のため、介護・障害福祉サービス施設整備等を促進するとともに、自立支援型ケアマネジメントの推進や短期集中予防サービスの利用促進により、高齢者の運動機能の改善を図る。

 また、介護人材確保のため、ハローワークと連携した介護未経験者の参入促進を図るとともに、健康づくり運動ポイントなど県民自ら主体的に健康づくりに取り組むことができる仕組みづくりを推進する。

 ③ 防災・減災対策の推進

 「災害による犠牲者ゼロ」を実現するため、巨大化する台風や局地的豪雨、近い将来発生が懸念されている南海トラフ地震・津波への対策として、命を守る道路や河川・海岸整備など国土強靱化を着実に進める。

 レベル4飛行(有人地帯での目視外飛行)が可能なドローンなどを活用し、道路・河川等の被害状況確認や施設点検、避難誘導、物資搬送などの体制を強化するとともに、盛土崩壊による災害から命を守るため、盛土のデータベース化や危険な盛土の把握・監視体制を構築する。加えて、災害発生直後における迅速かつ的確な救出救助活動と優先度の高い警察業務を継続できる体制を構築する。

    また、これらすべての防災・減災対策について、災害時に遅滞なく正確に発動できるようDX化を図る。

 ④ 防犯対策・交通安全の推進

 サイバー空間で拡大する犯罪に対し、AIを活用したサイバーパトロールの運用を開始するとともに、高機能解析機器による捜査支援体制の強化を行い、検挙力の向上を図る。

    また、歩行者の安全な通行を確保するため、通学路など生活道路の歩道整備を推進するとともに、横断歩行者事故抑止を目的とした「サイン+サンクス運動(手を上げて+ありがとうで渡る横断歩道)」を引き続き実施する。

 ⑤ 豊かな自然・文化の継承と国際交流の推進

 先人が守り、育んできた自然や文化を未来へと継承するため、「南紀熊野ジオパーク」のユネスコ世界ジオパーク認定に向けた国際活動を強化するとともに、水源涵養等の機能が高い森林を保全するため、天然林や広葉樹林の公的管理を推進する。

    また、毎年11月の「きのくに文化月間」を中心に、県内全域で文化事業を行うことで、文化芸術への関心を高め、文化の咲き誇る和歌山の実現に向けて取り組む。

 国際交流を推進するため、「第2回和歌山県人会世界大会」の開催や、「熊野古道・サンティアゴ巡礼道姉妹道提携25周年」を記念したスペイン・ガリシア州との文化交流や共同プロモーションを実施する。

(3) 次代を担う人と発展を支える基盤づくり

 ① 次代を担う人を育てる教育の充実

 グローバル化やデジタル化など急速に変化する社会に対応し、自らの力で未来を切り拓き世界で活躍する人材を育成するため、本県独自のプログラミング教育や、スタンフォード大学と連携して行うオールイングリッシュの講座を引き続き実施するとともに、串本古座高校への「宇宙探究コース」新設への準備を進める。

 また、年2回の県学習到達度調査と教員の指導力向上研修で構成される「学力向上プログラム」を実施し、中学生の学力向上を図るとともに、読書に積極的に取り組む児童生徒や学校を表彰することで、読書習慣の定着を図る。

   さらに、少子化等の影響により十分な活動ができない中学校の運動部の活動機会を確保するため、持続可能な運動部活動に向けた環境整備を行う。

 ② 生活環境の充実

   人口減少下においても、地域の活力や生活の基盤となるサービスを維持するため、市町村と連携し、上下水道施設の広域化や施設の共同化などによる基盤強化を推進する。

 また、循環型社会構築や環境保全のため、廃プラスチックの環境への流出抑制や、わかやまプラスチックごみ削減県民運動を推進するとともに、廃棄物の不法投棄を抑止するため、関係機関との連携により監視や取締りに取り組んでいく。

 ③ インフラ整備の推進

 企業誘致や産業の成長、観光誘客など将来のチャンスを保障し、大阪・関西万博の効果を最大限に発揮するために不可欠なインフラ整備を進めるとともに、紀伊半島一周高速道路や県内幹線道路等からなる道路ネットワークの更なる充実を図る。

 さらに、RORO船の定期航路誘致など和歌山下津港を経由した物流網の構築に積極的に取り組むとともに、製造業の国内回帰が活発化していることから、あやの台北部用地をはじめ、市町村と連携した新たな工業団地の開発を推進するなど、本県発展に必要となる基盤整備を強力に推進する。

II . 令和5年度予算編成方針

 令和5年度の新政策を推進するとともに、令和4年3月に策定した「新中期行財政経営プラン」を着実に実施するため、スクラップアンドビルドや事務事業の見直しを徹底することとし、既存事業については▲5%のシーリングを原則とする。

    また、投資的経費については、事業効果や緊急性等を精査しつつ、全体としての投資が財政健全化の妨げとならないように努める。

    なお、国の予算編成の動向等を踏まえ、予算編成過程において調整等を行うものとする。

関連ファイル

このページの先頭へ